インプラントの保証は歯科医院によって様々
インプラント治療での保証はとても重要なことですが、この「保証の定義」の見解や考え方が様々です。
インプラントは自由診療(自費治療)なので、保証をつけるもつけないも医院側が自由に設定できます。
2016年までの動向を見る限り、2005年頃は「10年保証」を掲げてインプラント治療に取り組んでいた歯科医院も、患者さんからの1件のクレームなどで「割に合わない」と保障期間を短くしたり、インプラント治療を行わなくなったりした医院も出てきました。
2010年頃から「3年保証」、長くて「5年保証」といった歯科医院が多くなったような気がします。
みんな勘違いするインプラント治療の保証の意味合い
みなさんも「インプラント治療の保証」と聞くと、「万が一何かあっても追加のお金は掛からないから安心」というイメージをお持ちの方もいるかもしれません。
よく相談で多いのですが、この保証を「返金保証」と思い込んでいる患者さんが多いのです。
もちろん自由診療ですから「返金保証」を行なっている歯科医院も当然あると思います。
当サイトの相談には、患者さんが「まだ、治療を受けていないものまでお金を先払いしているのだから返してほしい」と言われるケースが多くあります。
治療途中で先生側に対して不信感が出たことが理由と言う方も多いのはとても気になるところです。
基本的に保証とは「治療保証」という意味合いで、ほとんどが「返金保証」では無いという事です。
ですが、信頼関係が破綻した場合には、そこでの治療継続は難しいという患者さんのお気持ちもわかります。
この問題は、歯科医院側(患者さん側)が、「どの段階で、どこまでの分の治療費をご請求(お支払い)をするのか?」が重要です。
この自由診療の治療費の支払い方も、きちんとした法的な定めはありません。
こうした自由診療は保険診療と違い、基本的にお上(国、歯科医師会、厚生局)はノータッチなので、支払い方も「前払い」なのか、「治療ごとに払う」のか、「治療後に払う」のかは歯科医院側が決めて良いのです。
第三者機関のインプラント10年保証もある
保証サービス提供会社であるガイドデント社(本社:東京都渋谷区)が行っているサービスで、
「インプラント治療10年保証」「審美治療5年保証」という保証を受けれるシステムがあります。これは、ガイドデント社に登録認定している歯科医院で治療を行った場合に受けれる保証サービスです。
もちろんインプラントの長期維持には、定期通院によるメンテナンスが必要不可欠なので、これから治療をお考えの場合には、治療を行う歯科医院に、この保証が適応できるか確認してみるのもいいかもしれません。
詳しくは→【ガイドデント社HP】
返金の定義は「社会通念上どうなのか」がポイント
1、患者さんからの相談で、「治療を受けていないのにお金を請求された」、「払ったお金を返してもらえない」とのお電話を良くいただきます。
よく話を聞いてみると、インプラント手術当日に「やっぱり怖くなって、もうちょっと考えたいからキャンセルしたんです。」との理由でした。
優柔不断の患者さんのケースです。
「だって、怖かったんだからしょうがないじゃないの!」と患者さんも少々逆ギレ気味で言います。
患者さん都合の勝手な言い訳をする方もズバリ多いですこういう患者さん。
特にインターネットで調べすぎて不安が増してしまったのでしょう。
この場合は、自分に関係ないことまで頭に入り込んでしまいますからね。
こうなるとこれは立派な「神経症」かもしれません。
歯科医院側も、先生やスタッフがもう少し話しておけば大丈夫だったりする場合もありますが、最初からそういうことが予想できたというような未然に防げるケースも少なくありません。
それだけ最初の説明や事前のメンタルケアは重要なんですね。
私も歯科医院で治療前の患者さんにいっぱい説明してきた経験があるから分かります。
そうなる方って話をしていると大体分かります。
さて、本人さんの気持ち都合のキャンセルで、どれだけの損失があると思いますか?
- 歯科だけでなく医療の全ての「手術」には前もって準備が必要です。(時間)
- 専門の麻酔科医などを外部から呼んでいる場合(出張費)。
- インプラントDr.を外部から呼んでいる場合(出張費)。
- 他の患者さんの予約を入れずに貴方のために作った時間。その為のスッタッフ配置など、全てがパー(無駄)になってしまいます。
普通に考えれば戻りませんのは分かりますよね。
きちんと謝って関係を修復し、治療を受けることをお勧めしました。約束(手術日)を守らないのは社会通念上どうなのか?という内容でした。
どうしても!というような内容なら別ですが、ただ理由もなく先延ばしにするような方はインプラント治療をしない方がいいかもしれません。
理由があきれるような内容や、勝手な内容なら歯科医師側もとてもいい気分じゃありません。
良い治療を受けようと思ったら、時間などそういう部分も患者さん側からきちんとしなくてはいけませんね。
2、患者さんからの相談で、「このインプラントは貴方のために用意した特別な物なのだから、お金を払ってください!」と、歯科医院から言われたとのでどうすればよいですか?いう内容の電話がありました。
治療途中の段階でのお電話でした。
インプラント体のフィクスチャーは既に骨に埋入された状態で、被せ物の支台部(アバットメント)と、予定していた被せ物の代金を払ってくれ!とのことでした。
もう既に、被せ物の型取りまで行っているそうです。
型取りまで行っていれば、その方の為に合わせた被せ物の歯を歯科技工所で作らせています。
だから他の方には使えません。
それを患者さんが負担するのは当然のことと思います。
このような治療途中での相談は患者さん本人の都合の場合が多く、行った歯科医院できちんと治療を継続することを勧めています。転院などで途中で来られた場合、この続きの治療を行う歯科医院も大変です。
過去には、アバットメントと被せ物を渡されて「他へ行って下さい!」と言われた患者さんもいらっしゃいました。持ってこられた歯科医院さんもビックリしますでしょうね。
3、上記2と似ているケースなのですが、まだ治療がスタートしていない時点でのお話です。
茨城県水戸市のあるインプラントセンターのお話です。
患者さん(Aさん)が、この歯科医院にてインプラント治療を行うことを決断し、治療承諾書にサインをしました。インプラントの治療費はフィクスチャー分などは先にお支払い、アバットメント装着時に被せ物の代金と一緒にお支払い。つまり、治療費は、その治療工程ごと大きく分けて2回でのお支払いです。
それからインプラント治療を行うにあたり、他の歯の治療をしてからじゃないとインプラント治療ができないので、そちらを先にやりましょう!という流れになりました。
状態が悪ければここまでは普通の話ですね。
ところが、その段階で予定になかった歯まで治療を施し、その歯が悪くなった。(治療する歯を間違ったのか?過誤なのか?)そこから先生に対する不信感が発生!
予定していたインプラント治療の代金半分は先に払っているけど、お願いだからこのような状況になったので返して欲しい!とお願いしたら、診療中に「迷惑行為で警察呼びますよ!」と110番通報されてしまう事に。
その後、このはインプラントセンターは患者さんに対し、嫌がらせみたいに「当院で治療を続けるのか?」と内容証明郵便を数通も連続して患者さんに対し送りつける。まあ、普通こんなのが歯科から送られてくると思っていないからかなり怖いですよね。
さらに同じタイミングで別の患者さん(Bさん)から、またこのインプラントセンター絡みのご相談!
この時には治療費の支払い方法が、「全額前払い」に変更されてたそうです。
待合室にいたら、「絶対返金しないからな!」と、奥で先生がキレて叫びまくっている声が聞こえてきましたとの情報も聞いています。「治療は人柄が出る」というより、なんでそんなにココはトラブル多いの?って感じです。
何をしたいのかさっぱり分かりません。
上記のようなケースは歯科医院側の予定変更、説明不足、患者さん側の一方的な思い込み、などで発生する場合があるのですが、先払い、その都度払い、後払い(患者さんが払わない場合がある=歯科医院側にリスクがある)、など様々あるが、私は治療の都度に先払いが一番良いと思います。
ある弁護士の先生が言うには、「治療承諾書に返金の明記がある場合は、その記載内容が社会通念上どうなのか?」という事がポイントだと説明してくれました。
何がダメ、何が良いという事ではありません。
例えば、サインしたら一切の返金をしないと書かれていた場合、それは一般的にどうなのか?
治療をそこで受けなくなっても払わなければいけないのか?それは一般的にどうなのか?
という事が論点になるのです。
私が歯科事務長で患者さんに説明していた時は、30分ほど時間を使い、指差しで説明して、「分からないところはありますか?」と細かくチェックして書面にしていました。
言った言わないというのが無いようにしていました。
様々な歯科医院さんから「どのように説明すれば良いか?」「どのような書面の内容にすれば良いか?」と当サイトにご要望、ご相談をいただくことも多いですが、説明はその都度医院所定の書面で説明する。書面を渡す。同意を得る。これを徹底することです。
治療を行なって3年で被せ物(クラウン)が壊れた(欠けた)という患者さんは、相談で「書面はもらったけど先生から詳しく保証についての説明は受けてないので、それっておかしくないですか?」被せ物の費用が掛かるのは保証の範囲に含まれるんじゃないの?という強者の患者さんもいらっしゃいました。
重箱の隅を突っつくような話を歯科医院側に被せても良くなることはありません。
クラウンが欠けるのは安い材質のものを選んだ場合にも起こりうることなので、だったら最初から費用をケチらずにメタルボンドならセラミック、セラミックならジルコニアなど、ワンランク上の欠けにくい素材を選んでインプラント治療を行うべきです。
インプラント治療に保証があるのもおかしいことなのかもしれない
このサイトではインプラント治療の定義を「手術」と考えています。
このサイト内や他の項目での内容と矛盾するかもしれないのですが、医科のすべての手術などの治療において、完治を目的とした治療ではあるが100%を保証するものでは無いので、それを考えると医療に保証があるのも良く考えたらおかしな話かもしれません。
手術は物を買う行為とは訳が違うからです。
元々、手術を行うことに対してお願いします!という依頼のフィー(報酬)が本来の意味だからです。
だから医療を安売りしたり、インプラント治療の価値を下げる行為自体おかしな事なのです。
安くて上手な先生で!というのは都合が良すぎるかもしれない
この比較は料理で例えるとわかりやすいかもしれません。
良い食材を使って料理をすれば、ある一定の腕以上あれば美味しい料理を作ることはそんなに難しくは無いと思います。
ですが、鮮度の落ちた食材でそれ同等の料理ができるかといえば非常に難しいでしょう。
値段のリーズナブルさを例えれば、居酒屋横丁の中でそれ同等の値段のミシュランクラスの料理屋を探すのは無茶というものです。
結果、
選ぶのも自分。
そこに引き寄せられるのも自分。
なのです。
物には何でも水準というのがあります。
歯科医院選びも自分の身の丈に合う場所におのずと導かれるようになっているのです。
それだけの場所だからこそきちんとした環境設備、接遇で治療を行なっている訳です。
それだけしっかりと考えているからこそ診断や事前説明や書面などが大事だと思っている訳です。
ミシュランのレストランに居酒屋と同じ価値を求めますか?
記念日などここぞという時にはミシュランとは言わなくてもレストランくらいは予約しますよね。
ここぞという大事な時に居酒屋にしますか?
自分の歯が入る時は「ここぞという時」では無いのでしょうか?