インプラントの様々な種類の被せ物
インプラント(フィクスチャー)埋入後はインプラントのアバットメント部分(被せ物の支台部)を装着(装着は2ピースのインプラント場合)し、型を取り、いよいよ仮歯から被せ物を装着する準備をします。
患者さんに適した材質の選択肢がある歯科医院もありますが、歯科医師の経験や患者さん本人さんの噛み合わせなどの癖、咬合などを見て判断し、長期維持などを考えて選択するのが一般的です。
材質が硬く、加工が難しい物ほど高価になりますが、審美的に良い場合もあれば、患者さんの噛み合わせを考え歯科医師に選択してもらう場合がほとんどだと思います。
「被せ物の歯」を作るほとんどは、「歯科技工所」のお仕事になり、歯科医院の多くはこの「歯科技工所」に発注することになります。
極稀に、歯科医院が院内に「技工所:ラボ」を持っている場合や、「歯科技工所」を歯科医院が運営しているなどのケースもあり、短時間でクオリティ―の高い技工物を作れる場合もあります。
歯科技工士(しかぎこうし、英:(Dental Technician)は、歯科医師が作成した指示書を元に義歯(入れ歯)や補綴物(差し歯・銀歯)などの製作・加工を行う医療系技術専門職。 昨今の歯科医療の向上と医業の分業化に伴い、非常に高度な精密技工技術と審美感覚が求められている。また、義歯といった口腔関連のものだけでなく、顎顔面領域において義眼や耳介、その他では義指など様々な補綴物を製作している者もいる。歯科技工士法に基づく歯科技工士国家試験に合格した者に対する厚生労働大臣免許の国家資格であり業務独占資格であるため、歯科医師もしくは歯科技工士以外が歯科技工業務を行うことは法律で禁止されている。
歯科技工士とは??(Wikipediaより抜粋)
噛み合わせや患者さん本人の癖もしっかり考えた素材を選んでくれたり、型を取る時に、歯科技工士が立ち会ってくれる場合もあったり様々です。
インプラントの被せ物のセラミックって何?
セラミックは人との生体親和性が高く、金属アレルギーの心配もありません。単に歯を白くするだけでなく、色、つや、形などを考慮し、機能面も考え設計されています。
キレイさと、機能を長くがコンセプトの素材です。
インプラントの被せ物のジルコニアって何?
ジルコニアはジルコニウムの酸化物(酸化ジルコニウム)で強度が強い。
みなさんも模造(人工)ダイヤモンドとしてなら知っているかもしれません。
セラミックと同じように生体親和性が高い。
種類は数あり、「ジルコニアセラミックス」「オールジルコニア」などです。
ジルコニアセラミックは内側がセラミックで、外側がジルコニアの「ジルコニアボンド」とも言われます。
硬い素材なので加工が難しいとされていて、最近ではコンピューターCAD/CAM(ものすごい高価な機械)、ミリングマシンで削り出しを行うことができるようになり、ジルコニアの被せ物もかなり広まりました。
写真のような円板状のディスクから削り出します。
他の素材よりも最近のジルコニア系の素材は欠け、割れが少ないと言われています。
ジルコニア・セラミッククラウン
人工歯の内面にジルコニアを使用し、強度を向上させています。その表面はセラミックで築造されています。
自然感あふれる明るさと色調をだしています。インプラントのクラウン(被せ物)だけでなく、前歯と奥歯およびブリッジなどにも使用することができます。
オールジルコニアクラウン
強度にとてもすぐれています。
今までは微妙な白色調の再現には若干不向きな点もありましたが、最近はHT(ハイトランス)ジルコニアという自然に近い白色が表現できる素材も多く出てきた。
硬すぎて治療箇所や人によっては不向きな場合もある。
噛み合わせの調整などをきちんと行った場合などを主に奥歯に向いています。
インプラントの被せ物のメタルボンドって何?
中(裏側)は金属(メタル)で、外側にセラミックを使用している被せ物(冠・クラウン)です。
前歯にも奥歯にも適応できる範囲が広く、一昔前は主流の素材でした。
2024年現在は金属の高騰により少なくなってきました。
全部がセラミックの場合は「オールセラミッククラウン」ということになります。
ちなみに、セラミック(陶器)の部分は欠けることがあります。
ハイブリッドセラミック
セラミックと硬質プラスチック(レジン)を合体させた被せ物です。
最近はこのハイブリッドセラミックが増えてきました。価格、強度共に申し分ない素材ですが、割れ、欠け、着色は起こります。
セラミックやジルコニアに比べて強度は大幅に劣ります。
保険診療でも適応になったので、このハイブリッドセラミックを使用する歯科医院は増えてます。
(追記:保険では歯の部位により限定されるのと、使う技工所にもよりますので、どの歯科医院でもやっているわけではありません。)
そのほかにも「金」などの金属をしようしたり、様々な被せ物の素材があります。
一般的に「被せ物」と言っていますが、「補綴物(補綴物)」「上部構造」と言ったりします。
被せ物が取れる?
インプラント埋入が終わってから数ヶ月。
いよいよ被せ物を装着して自分の歯と同じようになることと思います。
複数本のインプラントの方は、ほとんどの場合被せ物が連結されていると思います。
最近この「被せ物がポロポロよく取れるのだけど!」というご相談をいただきます。
「仮付け」と「本付け」という用語が誤解を生んでいるのかもしれません。
言われた患者さんは、仮付けがあるなら次は本付けになるのだろう!と思ってしまいます。
良く、「仮付けのままなんですけど」というご相談の方がいらっしゃいますが、これはケースバイケースです。
もし仮に、上顎の歯が1本も無い方がインプラント埋入が4本で、被せ物が全部連結されていたとしましょう。
数年して1本のインプラントが仮にダメになってしまった。
その場合には、被せ物をガッチリとくっつけていたならば被せ物を全部壊さなければいけなくなる事もあります。
そうなれば被せ物は全部作り変えなければいけなくなるので費用はかさみます。
取れる場合には一度外してその部分だけ切断し、埋入をやり直した箇所だけ単冠にするなどの方法もあります。
このようにメリットもデメリットもあるので一概には何とも言えません。
きちんと先生に相談しましょう。
もちろん最初の型取り(印象)と歯科技工所から出来上がった被せ物が上手に出来なかったケースも想定できる場合もあります。
材質によっては歪み、曲がりなど経年劣化もあるので、患者さんが何年も使っていながら歯科医院に全額負担させるような行為は絶対にやってはいけません。
それ以外にも、すぐ被せ物が外れるからあそこの歯医者は下手だとか言う方がいらっしゃいます。
そのような行為も早とちり早合点で決めつけるのは、歯科医院との関係を悪化させるだけです。
しっかり説明を聞いて納得するか、負荷がかかって被せ物が外れてインプラントを守れたと思った方が賢明です。
あまりにも短期間ですぐポロポロ外れてしまうのならば、怒らずにきちんと相談することをオススメします。
被せ物の代金をケチケチするな!
少しでも治療費を安く!という気持ちもわかりますが、数万円違う被せ物の代金をケチる方に限って少しでも被せ物が欠けたりするとクレームを言う方が多いです。
「壊れにくい=長持ちする」に直結しますので、ケチケチしないことをオススメします。
一番壊れにくいのが「ジルコニア」。
その次に「オールセラミック」。
それに続くのが「ハイブリッドセラミック」。
です。
もちろん患者さんの口腔内の状況、噛みあわせ(食い縛り、歯ぎしりなど)、噛みあわせの歯に対しての事などの先生の考え方によっても違いますが、長持ちする素材だけで考えればジルコニアかオールセラミックでしょう。
まとめ
患者さん本人が希望しても、症例によって向いていない素材もありますのできちんと歯科医師と相談してお決めになるのが良いと思います。
決して患者さんから「ジルコニアが良い!」とか決めつけて先生に言わない事です。
その時は「私の噛み合わせに最適な材質は?」と聞くようにしましょう。
その方が関係良好であり話もスムーズです。