インプラント治療を希望する患者さんの中には口コミサイトやランキングサイト、またはインターネットでよく露出している、「1日で噛める!」「その日のうちに治療が終わります!」などといった広告などの美味い話に引っかかってしまう方も多いのですが、最近増えているのが「即時荷重」というインプラントの治療法です。
従来の基本的なインプラントの方針とは異なる
「即時荷重」について簡単に説明すると、本来は(一般的には)、前歯の場合には骨の幅が薄いので、抜歯後に即時でインプラント体(フィクスチャー)を埋入します。
奥歯の場合には、抜歯してからすぐにインプラント体(フィクスチャー)を埋入せず、3〜4ヶ月待ち、骨の状態が落ち着いてからインプラント体を埋入するのが今までのセオリー。
それを抜歯後に即時でインプラント体を埋入し、土台ネジである「アバットメント」を装着し、セラミックやジルコニアで出来た被せ物(上部構造)を装着して、その日に噛める(荷重がかけれる)という手順が「即時荷重」です。
2ピースタイプのインプラントは一般的に2回法ですので、2回手術が必要な所を1度で済めば患者さんの負担も少ないからといった理由で行われるようになりました。
ですが、
どの状態の患者でもできるものではない!
今までは待っていたのに早めるには疑問!
と、一部では声を上げる先生もいます。
では、解説してみましょう。
1日で治療が完結!そんな夢の様な話は転がっていない
患者さんからすれば「歯医者は苦手」とは言うものの、なるべく短い期間で!とか、少ない回数で!と都合の良いことばかりを考えると思います。
その大半の方は歯を失った原因などはあまり考えていないのが現状。
「だって、歯がないから歯医者に治療にきているんでしょ!」と胸を張って言う方もいらっしゃるかもしれません。
そんな方からすれば「1回で治療が終わる!」とか、「インプラント治療の時間短縮」を思わせる歯科広告の謳い文句はまさに「理想の歯科!」と思ってしまうでしょう。
ところが実際にはそんな都合よく美味しい話はありません。
なかでも、片顎12本分の歯を4本のインプラントで支える「オールオンフォー」を「埋入後即時荷重」で行なう歯科医院が、人気を集めているが──。
人工歯根の粗面加工は、感染を引き起こしやすいという重大な問題が分かってきた。これはインプラント周囲炎と呼ばれる症状で、最悪の場合はインプラントを撤去しなければならない。
参照:NEWSポストセブン」歯のインプラント治療「最新」を謳う歯科医に落とし穴
このような内容は当サイトでは今に始まったことではなく、以前から記事にしていた。
1本、2本の骨造成も必要としない簡単な症例であればまだ良いのですが、重度の歯周病などによる欠損歯が複数本あるような難症例の患者さんであれば、歯医者に行ったその日にインプラントの埋入手術を行うことなど到底無理です。
誤解が無い様に解説しておきますが、埋入手術が出来るか出来ないかで言ったら「歯科医師免許と技術と度胸」があれば可能は可能です。
ただし、その後がどういう結果になろうが・・・という話ですが。
本来ならば、きちんと歯周病などの事前治療を行なって、計画を立てて、それからインプラント治療を行うにあたって十分な骨量があるなど口腔内の状況に問題がなければ埋入手術をして3〜6ヶ月待って、骨とフィクスチャー(インプラント体)が結合したのを確認し、アバットメントを装着し、セラミックやジルコニアの被せ物(補綴物:上部構造)を装着するのが一般的な流れです。
結論からすると、重度な症例の方ほど楽をしようと思うと良い結果が得られない
ということです。
なかなかそんなに都合のいい話は転がっていません。

治療費も確実に100万円以上の高額になるので、こちらのページもご参照にしてみてください。
「最新の治療法」と謳う歯科医院には注意が必要
確かにここ近年の歯科インプラント治療は技術進歩もあり、過去に間違いとされていた治療の常識が、見直されると同時に常識になったり・・・・
その逆もあったりと変化もある業界が「歯科業界」でもあるのです。
「埋入後即時荷重は、患者さんの理解と協力が得られないと、トラブルが起きるリスクが基本的な治療法より高いと考えられます。『オールオンフォー』方式には、幾つもの利点もありますが、噛む力を支える人工歯根の本数が最小限です。1本でもトラブルが起きると、やり直す間、何らかの妥協が必要です。患者にとって本当のメリットは、10年、20年単位でインプラントが口腔内で機能することでしょう」
参照:NEWSポストセブン」歯のインプラント治療「最新」を謳う歯科医に落とし穴
上記リンク先の記事にもあるが、きちんと「即時荷重」でも長年実績が出ている先生を探すなどすることが懸命だと思います。
広告などに良く出現する様な「高い広告費を払って謳い文句を目立たせる」と言うことは、それに誘われる方をターゲットにしていると思ってください。
広告や口コミ、TVCM、本などを書いているから良い先生だと思ってしまったなど、良い結果が得られなかった方は後から必ず後悔します。
治療費用も当初の金額だけでなく、ダメになった箇所のやり直し治療や再手術費用なども含めたら更にお金と時間が掛かってしまいます。
自分の目で確かめずにインターネットだけで数百万もする治療を決断するのですから・・・探し方が安易としか言いようがありません。
即時荷重のパイオニアの先生も存在する
どの治療法にもパイオニアと呼ばれる先生というのは必ず存在します。
即時荷重についても同じことが言えると思います。
編集長の私が思うには、即時荷重を行う条件には「まず骨がしっかりしていること」、「患者さんがきちんと口腔管理や術後に定期通院ができること」、「楽とか足を運ばず治療が終わるという安易な考えの患者にはすぐにインプラント治療を行わない」という3つの条件が整わない限り治療をしてはいけない!と考えます。

この即時荷重を20年前からずっと同じ方法を取り組んでいて、安定して良い結果を出している先生もいらっしゃいます。
卓越した技術を持ち、良い結果を出し続けるには同じ事を続けるという苦労と努力が無いと到底出来ない事だと思います。奥歯の抜歯なども腫れない痛くないをテーマにしている先生です。東京近辺の方はネットで探してみてください。
この様なパイオニアの先生は、患者さんの口腔内がどんな状況の方でもなりふり構わずインプラント治療を即時荷重で行なっていないと思います。
インプラントをするにあたって骨が少ないとか、歯周病によって骨が吸収しているちょっと厳しいかな?という方の場合に「即時荷重を行うか行わないか?」で術後に良い結果が得られるか?得られないか?が左右されるのです。

この様な先生は安定して良い結果を出すために、きちんと症例を選んでいて、術者である先生が難しい症例や、ギリギリ難しい症例でもいう事を聞きそうにない患者ならばお断りするなど、対象を選び、安定した結果を出しています。
この方だったら大丈夫だな!この方のこの状態はまだ難しいかな?と厳密に精査し、その方法が行える状態にして即時荷重を行うはずです。
説明にもかなり重点を置いています。
インプラント治療は最初の口腔内の状態や、術後の患者さんの口腔内管理や意識、患者さんの治癒力など患者さんによって結果が大きく左右されます。
どんな名医が治療を行なったとしても、口腔内がボロボロの状態で治療を行えば、すぐにダメになることは明白だからです。
ひどい患者さんは「せっかく高いお金を払ったのに!」とか「下手!」とか言いたい放題言います。どんな高級ブランドも扱いが雑ならばすぐダメになります。
それと一緒です。
パイオニアの先生は技術勉強会などで即時荷重のテクニックなどを他の歯科医師の先生の教えたりもしますが、習った方はすぐに取り組んでみたいと思うのが本心です。
習った事を患者さんに治療を施して(やって)みて、結果を見てみたいとか、冒険心で行う先生もいるかもしれません。
そんな先生でもその判断を間違わなければ、パイオニアの先生と同じ様な良い結果が得られる確率も高いと思います。
一番怖いのは、「即日インプラント」と、患者さんの口腔内がどんな状況であっても誰でも出来てしまうと思わせてしまう誘い水が問題なのです。
口腔管理がきちんとできない患者さんや短絡的な患者さんに安易に即時荷重で治療を施してしまうほど怖いことはありません。
抜歯後の即時埋入について
基本的に今までは、通常の場合
・前歯は抜歯後即時にインプラント体(フィクスチャー)を埋入する
・奥歯(臼歯部)は抜歯後に期間を置いて、骨の状態が落ち着いてからインプラント体(フィクスチャー)を埋入する
というのが基本と言われています。
患者さんが複数の歯医者さんに行ってインプラント治療の流れを聞いた時、それぞれ歯医者さんが言うことが違う!とご相談が来る場合がありますが、先生によって考え方が異なります。
前歯の場合は親指と人差し指で1番前の歯をつまんでみればわかると思いますが、奥歯に比べて骨は平べったく幅が少ないと思います。
今まで歯を長期間抜けっぱなしにしていた方やブリッジをしていた方などで、歯がない所の歯肉が痩せてしまっている方もいらっしゃいます。
まあ、歯周病に感染していて骨が溶けてしまっている方など例外は除いて、ほとんどの場合は前歯は抜歯したらすぐにインプラントを入れると思います。

奥歯の場合は抜歯してから3〜4ヶ月時間を置いてから骨の状態が落ち着いてインプラント体(フィクスチャー)を埋入するのが通常です。
埋入後即時荷重は抜歯してフィクスチャーを埋入後、アバットメント装着し、仮歯も装着することを1日で行います。
たとえ「1日で噛める」と言っても患者さんの中には「おせんべいは食べれますか?」とか聞く人もいらっしゃいますが、この手の質問は小学校レベルの話で、遠足で「バナナはお菓子ですか?」と聞く様なものです。
一般常識で考えたらインプラント治療後はいかなる状況であっても硬いものは噛んではいけません。
まあ、例外を聞いてくる患者さんは「要注意」なんですけどね。
それだけ説明は重要なのです。
