インプラント治療が失敗した?と勘違い??
患者さんの中には、あまりに心配しすぎて失敗と勘違い、早とちりする方も多くいらっしゃいます。
自分の想定外の腫れや痛みで失敗したと勝手に思い込む方も。
痛みが引かず不安になる方も。こんなに痛くなるのは聞いていない!と文句を言う怖い方もいらっしゃいました。
ぜんぜん失敗などのレベルではないのに「失敗?」とご相談いただくケースは特に40代以降の女性の方に多く、過度の心配性や神経質の方に多い傾向です。
関連ページ → インプラント治療と不定愁訴
この時期に生じる自律神経失調症状と精神症状が相互に関係しあって起こる、不定愁訴の総称と考えられます。
参照=Yahoo!ヘルスケアより抜粋
「友人からおかしいんじゃ?と言われた」「ネットで調べたら私もそうかもしれない」と、実際そうでない方が悪い方にイメージして不定愁訴(原因がはっきりしない。医学的に因果関係がはっきりしない症状)が出て来るケースもあるのでは?と思います。更年期障害も鬱(うつ)も本人の自覚症状が無い場合があり、本人はいたって普通と思っている事もあるから大変です。
「いいや!絶対にそうです!」と失敗と勝手に思い込んでいる方に失敗じゃないと理解してもらうのにはかなりの神経と体力を使います。もちろん当サイトへの相談でもかなりの神経と体力を使ってます。
もったいないじゃないですか。失敗じゃ無いのに失敗と思い込んで無駄な時間を過ごすのは。
そのエネルギーは先の治療や楽しい人生の生き方に使いましょうよ。
先生だって患者さんを痛くしたくて治療を行なっているわけでは無い!
「あそこの先生に痛くされたんです!」って言う患者さんもいらっしゃいます。でもこれって歯科の治療に限って言われるような気がするんですね。でも実際は、そこまで痛くなるまで放っておいてという患者さんの歯に対しての認識の甘さがあると思います。
インプラント治療などで腫れた腫れないは、確かに上手な先生によっても異なる場合もあると思いますが、外科的侵襲が高ければ腫れるのはしょうがないことです。
外科的侵襲が高い治療が必要ということは、それだけ放置していたからなどの理由があるわけです。
インプラントのチタンや骨補填材は、元々人間の身体に無いものを入れる訳ですから、異物と感じて拒絶反応を起こすことは当然あります。だから抗生物質や痛み止め(炎症を止める薬)を飲むわけです。
年齢に関係無く身体が若い方は抵抗力く、異物を外に排除する人間誰しもが持つ反応が出ます。
「痛い」「腫れた」「そんなの聞いてない」程度で先生に詰め寄った場合、先生との関係が悪化する可能性もありますので患者さんも注意が必要です。まあ、最初に説明があったにこしたことはありませんが。
決して痛くしたくてやっている訳では無いと言うことを覚えておきましょう。
下記には今までのご相談内容を例に挙げて、失敗と思い込んだケースや疑問を解説します。
腫れや痛みについて(骨造成)
骨が足りないと言われた・・・・
インプラント治療前に、フィクスチャー(インプラント体)が埋入できるだけの骨量が足りない場合、GBR法などを用いて骨造成を行います。きちんと基礎(土台を作って)を固めてから治療を行うわけです。
その理由は、
長い期間にわたり欠損歯を放置していたなどの理由で骨吸収を起こしインプラント体を入れるだけの骨が無い。
歯周病などで多くの歯が無い。
などなど、骨が足りないと言われるケースにはさまざまな原因があると思います。
臼歯部(きゅうしぶ)(親知らずがあれば8番。通常は7番、6番、5番、4番)などでは一般的に、骨造成手術を先に行なって3ヶ月から6ヶ月時間を置き、十分な骨量が出来てからインプラント手術を行う先生が多いです。
※例外として、抜歯後即時荷重を行う先生もいらっしゃいます。
人工骨は正式には「骨補填材」と言います。
骨補填材の原料には完全人工物の物や牛骨を材料とした物があります。
中には自分の身体の別の場所から骨(自家骨)を採ってきて使用する場合もあります。
これは骨移植と言います。
自分の骨の方が感染リスクや拒絶は少ないと言われていますが、先生の間ではどっちも一緒という意見もあります。
将来、骨が吸収する(痩せて無くなってしまう)可能性も一緒とも言われています。
色々研究や勉強している先生の間では「完全人工物」の中でもβ-TCPという人工骨を使う先生が増えてきたような気がします。様々なメーカー製品の表面構造との相性もあるみたいです。
人工骨は元々人間の身体の中には存在しない「物質」ですので、人によっては異物と感じ、抵抗力(防御反応)が働きます。バイ菌が入った時と同じですね。
ということは、身体の外に出す働きが出る「炎症=腫れる可能性がある」という事です。
そのため、「抗生物質」や「痛み止め」が処方されるわけです。この「腫れただけ」で失敗と思い込んで相談の電話を掛けてくる方がたまにいらっしゃいます。
こればっかりは最初の1〜2週間は様子を見るしかありません。
「病は気から」という言葉の通り、神経質な方ほど心配になり、「インプラント 腫れた」などのキーワードでネット検索などを行います。心の底から「大丈夫!」と思ってください。
あまりにも長い期間腫れが続く場合は先生に相談するのが良いでしょう。
徐々に腫れは引いてきたが3週間腫れたという方もいらしゃいました。
さすがにどれくらい骨ができるか、確実に骨ができるのか?というのは個人差があるので、1度で上手くいかない場合もあるということを覚えておいてください。
その時はもう一度骨造成を行います。2回目は意外に腫れないといったケースも。免疫ができたのでしょうか?人間の身体って不思議ですね。なのでこれくらいは、失敗の範囲ではありませんでしょう。
インプラント埋入後の痺れ
骨造成後と同じく、インプラント体(フィクスチャー)もチタンでできていますので、身体の中に存在しない物質を骨に埋め込むわけです。治療での外科的侵襲(歯を抜くとか骨を削るとか)とは違い、異物を入れるわけですから当然腫れる場合があるのです。もちろんすんなり腫れずに済む方も大勢います。
良く相談で多いのが、下顎のインプラント後の相談です。
その中でも問題は「痺れ(しびれ)」がある場合です。
下顎などのインプラント埋入の場合、奥歯から3本(親知らずがあれば8番。通常は7番、6番、5番=臼歯部と呼ばれる部分)を治療した後に、耳の下あたりから唇の先端にかけて痺れ(しびれ)がある場合はすぐに治療を行なった先生、もしくは大きな病院の口腔外科に相談することをお勧めします。
下顎神経圧迫(下歯槽神経、オトガイ神経)や損傷は時間が経ってからでは遅い場合があります。
その痺れが引くのか麻痺のままになるのかは神でも分からないと言われています。
その時の先生の対応で良い先生かどうか分かると言っても過言ではありません。
これって普通なんですか?
インプラント1本に対して被せ物は1本ずつじゃないんですか?被せ物が全部繋がっているんですけど!
そのようなご相談はかなり多くいただきます。
上部構造の連結は、先生にとってはあまりにも当たり前のことなので説明をしない先生、つい言うのを忘れてしまっている先生も意外と多いのでしょう。
例えば、3本並んでインプラントを入れた時など複数本の場合のほとんどはジルコニアやセラミックなどでできた上部構造(被せ物)は、ほとんどの場合連結することが多いです。
複数本の場合はインプラント同士での連結になります。
ただし、天然歯(自分の歯)とインプラントをくっつけることはありません。
その理由は、自分の歯は揺れますが、インプラントは骨と結合しているため揺れないからです。
もちろん1本の欠損箇所にインプラントを埋入した場合は被せ物は1つになります。
前歯の被せ物がビーバーみたいに長い!
前歯のインプラント治療後の相談で多いのが、「治療後に白い被せ物が長くなってしまいビーバーみたいになってしまった」という方がいらっしゃいます。患者さんの中には、そうならないように色々な歯科医院をまわって相談をしてから治療を行なったにもかかわらず、結果は無残にも被せ物が長く・・・というケースもありました。
被せ物が長くなければ金属(インプラント)が見えてしまう可能性も。
噛めるから良しとするか難しいところです。最初の時点でどのようになるのか聞いておいた方が良いでしょう。
後からの歯肉の移植はお金も掛かるし痛い思いをしますしね。そのような可能性が最初からあるのであれば、なるべくはじめに聞いておきたいと思います。それが治療計画です。
抜歯後のインプラントは箇所によって違う
何軒か歯医者さんを周ったんだけど、先生によって違うのは何故ですか?というご相談を頂きます。
抜歯後のインプラントは先生によって考えが異なるからです。
抜歯後のインプラント埋入は治療を行う箇所や骨の状態によっても異なります。
奥歯などでは抜歯後3ヶ月から6ヶ月ほどの期間を置き、骨の状態が落ち着いてからインプラント治療を行うのに対し、前歯は抜歯後なるべく早くインプラント埋入を行います。※例外として、抜歯後即時荷重を行う先生もいらっしゃいます。
もちろん例外もあります。
前歯でも状態が悪ければ期間を置く場合もありますし、先生によって歯肉や骨の状態などの見極め方が違います。ちなみに、抜歯後にインプラントをお考えの場合はインプラント治療を行う所でやるのがベストです。
インプラント埋入を前提とした抜歯を行うからです。
一部の歯科医院では「抜歯は他の歯医者でやってきてくれ!」と言う所があります。こうした歯科はインプラント埋入だけをやりたい!他の治療はやりたくない!という気持ちが前面に出ています。
特に、ホームページには一般治療をやってる様に書いてあっても、抜歯などの一般診療はしたくない!
このような歯科医院を最近は「インプラント屋」と呼ばれています。
他の治療があった時に対応してもらえない場合があるので注意が必要です。
被せ物が割れただけで失敗?
被せ物には様々な種類があります。その中でも欠けやすい材質のものがあります。
例えば「メタルボンド」などは、インプラントのアバットメント部分の接着面は金属。その周りに白いセラミックが付いている被せ物です。これが経年劣化などで良く欠けるのですが、「インプラントが壊れたんですけど??」と相談してくる方が意外と多いのです。ぜんぜん失敗などではありませんのでご安心を。
患者さんの間違った思い込みに対しての納得
インプラント治療や歯科治療が失敗と思い込んでいる患者さんに対しての説明は本当に大変です。失敗でもなんでもない状態を失敗と決めつけてしまっている状態から話をしなくてはいけないからです。納得がいくとかいかないとかはさておき、患者さんが聞く耳を持って初めて説明というものが成立します。
患者さんがネットで理論武装して先生に話をぶつける方も最近は多いのですが、その患者さんの症状とは全く関係ないものをウェブで情報を拾って先生にぶつけているケースが多いです。
やはり事が起こった直後に先生が患者さんに話をし、誠意を受け取るのが一番です。
「納得」がいくというより「了承」といえば分かりやすいでしょうか?
落とし所が無い話はゴールが無くなってしまい、治療からどんどん離れて行ってしまいます。
問題が起こる時は、先生が患者さんにミスを伝えなかった場合や誠意がない対応の場合も多いのですが、その時にどこまでしてもらえるのか?というのが論点だと思います。
決して粘着質にならない事が納得できるかどうかの近道だと思います。